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第2回 新作マーダーミステリー大賞
結果発表

(最終更新:2023/8/5)​

結果発表
GM​必要部門

受賞作なし

GM​不要部門

大賞
該当作なし

奨励賞

『ミッシングファイター』

(tomiha)

ミステリアス・トレジャー賞

『地球より愛をこめて』

(冬浮)

​2023年7月10日、​新作マーダーミステリー大賞を運営する各団体の代表(グループSNE:安田均・柘植めぐみ・黒田尚吾、コザイク:秋口ぎぐる、ディアシュピール:川口正志、ミステリアス・トレジャー:水谷剛、ラビットホール:酒井りゅうのすけ)らによる選考会を行い、上記の作品を受賞作品として選出いたしました。

残念ながら、大賞はGM必要部門・GM不要部門ともに該当作なしとなりました。

奨励賞には、ゲーム的なジレンマの面で評価が伸びなかったものの、マーダーミステリーゲームにヘックスマップを使うという真新しさが評価された『ミッシングファイター』を選出いたしました。

​また、ミステリアス・トレジャーより、設定・ストーリー面を評価し、『地球より愛をこめて』にミステリアス・トレジャー賞を授与いたします。

受賞された『ミッシングファイター』および『地球より愛をこめて』につきましては、後日、運営団体より応募者の方々に製品化について相談させていただきます。

​※今回の募集要項はこちらをご覧ください。

​最終選考進出作

GM必要

  • 『忌むべきものの葬送』(かかしのクロウリー)

GM不要部門

  • 『ミッシングファイター(Missing Fighter)』(tomiha)​

  • 『船乗りの願いは終宵に沈む』(ヘシオリ)

  • 『地球より愛をこめて』(冬浮)

※かぎかっこ内は応募作名、丸かっこ内は応募者のペンネーム。

総評・作品別講評

総評

今回もバラエティに富む作品が揃った。まずはそれを評価したい。

選考にあたってグループSNEの注目点としては、つぎの3つを考えた。

  1. 設定に斬新さはあるだろうか。マーダーミステリー(殺人ミステリー)という性質上、基本は推理小説風のものが多くなる。当然そうなのだが、ここはあえて、どこか一つ変わった設定でプレイヤーを引き込むものを期待した。さいわい推理小説分野にも、近年は特殊設定ものがいくつも出てきており、そこにやや比重を置いたと思ってもらいたい。

  2. と同時に、推理、論理もしっかりとしたもの、それが手がかりとして、ある程度うまく提示されているものにも留意した。オーソドックスなものはもちろんだが、特殊なものであれ、ミステリーの中の推理ものである以上、コアに謎解きの推理・論理部分が収まっているのは重要だから。

  3. ゲームシステムとしての魅力。マーダーミステリーは通常のボードゲームよりも、上記2つの部分でテーマ的にやや絞られる。そこで上にも書いたように、従来の上をいく、あるいは従来にない要素を取り込むように努めると、もう一つの大事な要素、ゲームシステムをどうとらえるかが考えどころとなる。こちらは、従来のようにマーダーミステリーのもとにある『王府百年』や、既存で目につきやすいもの(たとえばグループSNE形式)を基本にしてもらうのはかまわないが、どこか新しいユニークな部分を一部でも見せてもらえるのを期待した。

そうした観点から最終候補作4点を選ばせていただいたが、上記3つをすべて満たすのはなかなか難度が高かったようだ。最終的にグループSNEとして、上の1と3の部分が強調されている『ミッシングファイター』を奨励作として推させていただいた。他の3作も水準は高いと思う。

(グループSNE:安田均、柘植めぐみ、黒田尚吾)

 

今回、とても楽しく選考(のためのプレイ)をさせていただきました。特に、最終選考に残った4作品はアイデアが斬新だったり謎が少しずつ紐解かれていく感覚がとても心地良かったりプレイ中のドキドキ感が強かったりと、それぞれ突出した魅力を持っており、いずれも「自分がお客さんだったとして、この作品におカネを払うことになんのためらいもない!」と思えるクオリティでした。

ただ(上記4作品に限らず)多くの作品に対して思ったのは、「犯人役のプレイヤー、かわいそうだな」ということです。

犯人の逃げ切りが難しく、プレイ終盤は犯人以外のプレイヤー全員が犯人を延々と責めつづけるだけ、犯人以外のプレイヤー全員が気持ち良くなるために犯人役ひとりが犠牲になるゲーム、という印象の作品が多々ありました。

当たり前ですが犯人役よりもそれ以外のプレイヤーのほうが数が多くなるので、テストプレイ後の感想戦では「犯人以外のプレイヤーが気持ち良くなるための意見」が多数派になると思います。そして「犯人以外が気持ち良くなるゲーム」のほうが好意的な口コミの数が(物理的に)多くなるとは思います。ですが、そこで多数の意見や一時的な「多数へのアピール」に流されず、冷静に「フェアなゲーム」を作らないと、あるいは真相を知っている犯人役がその真相以外の要素についてしっかり考えたり工夫したりできるような、つまり「逃げ切り」以外にも頭を使って楽しめるような作品を作らないと、「犯人役を引いてしまったためにマダミスが嫌いになる」プレイヤーが出てくるんじゃないか、と危惧しました(ちなみにこれは自戒も込めて書いています。僕自身も最近の作品では犯人役が捕まりやすくなるバランスで作っていた自覚があるので、深く反省しています)。

マダミスを「攻撃的な熟練プレイヤーだけが残るジャンル」にしないためにも、「マダミスのお客さん、最近は協力型推理ゲームやストーリープレイングに流れちゃったね」と言われないためにも、気をつけていかないとな、と強く思いました。

(cosaic:秋口ぎぐる)

 

たくさんのご応募、ありがとうございました。
まず全体のイメージとして「3年前に比べて制作が熟れてきた」と感じました。マーダーミステリーとしてそこそこの安定感はあるものの、一方で「独創性があまり感じられない」という欠点も出てしまった印象です。特に、システム面ではほぼSNE/cosaic作品(Mystery Party in the Box)と同様である作品が多いため、多くの作品でシステムやゲーム性に加点をすることができず、大賞作品は「該当なし」とさせていただきました。

審査の基準といたしましては、ストーリーの面白さ(独創性)はもちろん、システムの独創性や、ストーリーとの親和性、そこから生まれるゲーム性など「他でもない"マーダーミステリー"としての楽しさの追及」を総合的に判断しました。

(ディアシュピール:川口正志)

 

今回も約3か月という短い募集期間でしたが、この間に作品を仕上げて応募してくださった皆さま、誠にありがとうございます。楽しく審査させていただくことができ、前回の新作マーダーミステリー大賞よりも全体的なレベルが底上げされていると感じました。

それにもかかわらず大賞に該当する作品が出なかったのは、ゲームとしてジレンマをうまく生み出せている作品に出会えなかったためです。マーダーミステリーゲームは、シナリオが面白いか/納得できるか、マーダーミステリー部分が単純すぎないか/フェアであるかに加え、ゲームとしてジレンマが感じられるかが重要です。例えば、普通に犯人を捜していれば自ずと達成できるようなサブミッションが設定されていても、ジレンマを感じることはありません。この情報を明かせば真相に近づけそうだが、明かすとサブミッションの達成が困難になるかもしれない……といったさじ加減が理想です。

どのような狙いでこのミッションを設定しているのか、何のためにこのフェーズを設けているのかという具合に、一つ一つに理由をつけて全体を構成すると、良い作品に仕上げるでしょう(もちろん簡単なことではないのですが)。

(ミステリアス・トレジャー:水谷剛)

 

たくさんの作品と出会い体験する事ができ非常に楽しい審査をさせていただきました。

今回は「GMあり部門」「GMなし部門」と部門が二つに分かれた状態で共に該当作品はなしとなってしまいましたがその中でも「GMあり部門」の該当作品を選出できなかった事は運営側に大きな責任があると考えています。

「GMあり部門」については店舗公演に向けた部門になっているのですが、そもそも店舗公演でGMがいればどの様な処理や作業を担ってくれるのかを明確にお伝えできていなかったのは大きな反省ポイントだと思います。実際、多くの作者さんは店舗公演に向けて作品を考えている訳ではないので、システムとしてGMを使えると言われても、具体的なアイディアとして

組み込んだ作品に反映させるのは難しかったのだと感じています。

全体的な審査のポイントとしては「ストーリーの魅力」「独自性のあるアイディア」「推理の納得感」「プレイヤーVSプレイヤーの勝負の平等性」という部分に注目をし、どこかで大きな失点があると、最終審査の段階で大賞としては厳しいのではという意見を出させていただきました。

(ラビットホール:酒井りゅうのすけ)

 

『忌むべきものの葬送』講評

古い日本が舞台。「しきたり」「呪い」のキーワードをしっかり押さえ、ホラー感覚もあって惹きつけられる。が、それらは雰囲気メインで、本筋とあまり関係がないのが残念。明らかに容疑者から外れる人物もおり、担当プレイヤーには物足りなかった模様。最も惜しいのは動機。これでは納得できない。また、GMの必要性はあまり感じられなかった。

(グループSNE)

 

推理の過程が本当に楽しかったです(逆に、犯人役は楽しくなかったと思います)。最近プレイしたマダミスの中ではいちばん面白かったと言っても過言ではありません。唯一、魅力的な世界観が推理やギミックにほとんど関係していない点が残念でした。

(cosaic)

 

雰囲気、シナリオ共に楽しい作品ですが、キャラクターの難解な関係性や、推理導線の納得感の薄さが惜しかった作品です。特に推理導線については、作中で設けられたルールとキャラクターの行動に整合性がとれていないため、もうひとつ、プレイヤーを納得させる理由づけ(行動や発言、ギミックなど)が欲しかったと思います。ここが上手く行けば、情報整理による犯人捜しを失くせるため、推理作品としても一段面白くなると思います。

(ディアシュピール)

 

ルール説明の段階では和風ホラーな雰囲気が漂い、期待感がありましたが、それが推理や演出に生きなかったのが残念でした。また、GM必要部門での応募でしたが、進行上特にGMの必要性を感じませんでした。GMを必要とするのであれば、GMが存在するからこそできるような情報の出し方や演出を考えると、ゲームとしても体験としても幅が広がります。世界観は魅力的なので、その世界観が生きるような構成を意識すると良い作品になりそうです。

(ミステリアス・トレジャー)

 

“因習”や“呪い”が漂う寒村での物語はこういう世界設定のマーダーミステリーをやりたかったと思えた作品です。

導入部分での世界設定が本編の中では少し薄れていくのを感じました。GMあり部門での応募でしたが、GMの必要性を強く使った形になっていなかったのは前述の通り運営側の反省ポイントでもあります。プレイヤーの中の疑心暗鬼になる疑惑の種なども因習と絡めてもう少し盛っていただければと感じました。

(ラビットホール)

 

 

『ミッシングファイター(Missing Fighter)』講評

飛行ルートに時間を示すマップを使用することで、場所と時間を感覚的にわかるようにするメカニズムがマーダーミステリーの新しい可能性を示してくれた。プレイに3時間以上かかる応募作品が多い中、短時間(90分)、少人数(4人)で遊べるのもよい。ただ全体にあっさりしており、ミステリーの部分もやや弱めなので、そこを補えればもっと面白くなるだろう。

(グループSNE)

 

『トップガン』を彷彿とさせる設定がマダミスになるんだ、という驚きにガツンとやられました。へクスを使った状況整理というアイデアも相まって、作者天才やなと。度肝を抜かれました。

(cosaic)

 

へクスを使って状況を把握させるギミックは非常に独特で、今回の応募作の中では群を抜いておりました。非常に評価できる部分です。一方で大賞に届かなかった理由としては、推理は必要とせず、情報整理で犯人を追及するものであるため、犯人に逃げ道がなく、犯人役にはアンフェアな作りとなっていました。容疑の拡散を少し意識して組み込むことで、良くなる作品だと思います。

(ディアシュピール)

 

ヘックスで構成されたマップを見た時は、これがゲームにどう生きるんだろうとわくわくしました。ただ、作者が想定しているとおりにヘックスマップを使うと、犯人以外のプレイヤーにとっては単純な作業になり、また犯人のプレイヤーにとっては疑惑を逃れるすべがほぼなくなってしまいます。マップはあくまでも情報の一つとし、いくつかの可能性が残るようなバランスにするとよいのではないでしょうか。

(ミステリアス・トレジャー)

 

シナリオと非常に相性の良い独自のマッピングシステムを組み込んでおられ非常に独自性というポイントで他をリードされた印象の作品です。

90分程度というコンパクトに遊べる作品ボリュームの手軽さは良い部分でもありましたが、その分全体的にマーダーミステリーとしては薄味になってしまっている印象もありました。各キャラクターの絡み合いや疑心暗鬼になってしまう要素がもう少し欲しかったです。

(ラビットホール)

 

 

『船乗りの願いは終宵に沈む』講評

海賊船が舞台というだけでワクワクする。ややご都合的で現実離れした設定もあるので好き嫌いが分かれるかもしれない。真相を突き止めるだけでなく、もう1つ別の投票要素があるのも面白い。ただ、本筋から外れたキャラクターが貧乏くじを引かされる流れになるかも。世界観的にどうしても女性の登場人物が少なくなるのもちょっと寂しい。

(グループSNE)

 

プレイ中の楽しさと興奮は随一でした。ただ真相の納得感が薄く、また(これはたまたまですが)僕自身がメインのストーリーとあまり関わりのない脇役キャラを担当したため、全体議論の中で疎外感がありました。

(cosaic)

 

細かい部分で「船上や特殊な設定の説明が不十分なこともあり、状況が分かり辛い」「情報の処理の方法が若干分かりづらい」という点はあるものの、今回審査した作品の中では大きな不満も無く、かなり安定した作品と言えます。ただ、安定感がある一方で、独創性の弱さが目立ちました。安定した作りは決して悪いことではありませんが、ゲームとして「山場(盛り上がりどころ)」の設定もあるとより良くなると思います。

(ディアシュピール)

 

システム面では、誰を信じるかという点で葛藤を感じられるような仕掛けがあった一方で、メインミッションとサブミッションの方向性が同じというキャラクターが複数存在しました。犯人ではないプレイヤーのメインミッションは「犯人を見つけること」で統一しつつ、各自にそれと相反するサブミッションを設定するのが一つの理想です。推理面では、気づきにくい導線が多くあるように感じました。たとえプレイヤーが真相にたどり着けなくても、解説を聞いた時に、これは気づけたなと悔しがれるくらいのバランスを目指すとよいでしょう。

(ミステリアス・トレジャー)

 

海賊船での物語ということで荒くれものを演じるのは楽しいと感じた作品です。表の顔と裏の顔そして意外な人間関係というマーダーミステリーの基本となる部分もうまく組み込まれていてプレイ中に幾つかの驚きと発見を楽しませていただきました。推理部分での犯人を見つけるための動線作りなどが納得感を下げてしまっている部分になってしまっていました。またキャラクター全体のバランスもまだまだ調整できるポイントが有りそうでした。

(ラビットホール)

 

 

『地球より愛をこめて』講評

作者の頭の中に「これがやりたい」というものが強くあり、それを何としても表現しようする熱意が伝わってくる。宇宙船という密閉空間を舞台にしたマーダーミステリーは多いが、特徴はしっかり出せていたと思う。しかしプレイヤーを最後に驚かせるため、「わざと書かれていない」要素があり、そこを素直に楽しめるかどうかは受け手次第だろう。

(グループSNE)

 

大ネタがめちゃくちゃ面白かったです! 皆が気づいた瞬間の「おおーっ!」という盛り上がりが最高でした。ただ「アクション」の設計が甘く、「自分のキャラのアクションを成功させるモチベーションが湧かない」というプレイヤーが複数発生していました。

(cosaic)

 

非常にトリッキーなシナリオが魅力的な本作品ですが、プレイヤーの中には、このシナリオギミックを不快に感じる者もいたため、マーダーミステリーとして楽しませるためには、もうひと工夫が必要であると感じました。また、犯人を不利にしない意図からか、納得感を削ぐ手法が採用されており、ゲーム的な設定の部分でもう一歩であったと思います。一度キャラを精査し、ストーリーを活かせるシステムの模索と情報の精査をすることで、良くなる作品だと思いました。

(ディアシュピール)

 

メインのトリックが面白く、展開の意外性の点では一番でした。ただし、プレイヤーが読者ではなくキャラクターの立場で参加するというマーダーミステリーゲームの特性との食い合わせの悪さは否めません。また、一番の仕掛けに気づいたところで、それ単体では犯人特定までに距離がありました。一番の仕掛けに気づけば、あとは「これがこうだということは、犯人は……」とテンポ良く推理を展開できるようにすると、プレイヤーとしてはカタルシスが得やすいでしょう。

(ミステリアス・トレジャー)

 

作者さんが物語を通じて描かれたい仕掛けは今回一番面白いと感じた作品でした。しかし仕掛けの為に情報の形が歪んでしまっていたり、本来気が付いて欲しいタイミングではない所で仕掛けに気が付いてしまう人も出る可能性があり、それは物語の体験バランスに大きく影響を与えてしまうので仕掛けの発動タイミングなど調整を慎重に行ってもらえれば良い作品になりそうです。

(ラビットホール)

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